2020年05月09日

光のキャンバスをつくる

2005_13.jpg

漆で下塗りしてなめらかな面を作ったあと、金箔を貼る作業。

今日は貼るぞ、という日は朝から何となく落ち着かない気分。
私にはとても緊張する工程で、最中は呼吸しているかどうかも不明です。

金を延ばして叩いて、極限まで薄く加工したのが金箔。
漆芸用の一般的な金箔は、光がかなり透けてみえるくらい、薄いです。

今回は1週間ほどかけて2回貼り重ねてから次の工程へ進みます。


2003_22.jpg

5月10日は母の日。
アテナリオンラインショップでは、母の日の贈り物にお勧めのジュエリーをセレクトして販売中です。
シルクコードプレゼント&国内送料無料は、明日いっぱいで一旦終了になります。

詳しくはこちらの過去記事を、ご覧ください。


では、今日も良い一日になりますように!

2020年05月01日

今週の読書

2005_4.jpg

ヘビー級の『接続性の地政学』『ゾミア』の後、軽めのを読みたくて注文した本。

困難にブロックされたままにならないこと。教育環境の大切さについて。
レバノンを含む中東の現代史にも少しだけ触れられます。

関西暮らし時代の話もあって、カナディアンアカデミーという単語で一瞬子供時代にワープ。
懐かしい。(自分は通っていませんけど)

女性らしい強さ賢さに、清々しい気分になれる本。お勧めです。


2005_3.jpg

今日も良い一日になりますように!

2020年04月27日

work in progress

2004_52.jpg

ふたたび製作過程のご紹介です。
写真で手にしているのは筆ではありません。
さて何でしょう?


答えは鯛の歯です。 正しくは、鯛の歯を筆軸にくっつけたもの。
鯛牙(たいき)といって、蒔絵技法には欠かせない一般的な道具です。

蒔絵は金属粉を蒔いて、磨いて仕上げます。
金も銀も純度は高い(100%)のですが、所詮粉なので、磨いても無垢の金属に比べれば質感はマットです。

そこで、一通り仕上げた後に、もう少し光らせたいなと思った部分は、この鯛の歯で表面をさらさらと擦って、磨くことがあります。凹凸をつぶして滑らかにする感じ。

細かい部分にも、痒いところに手が届くようにこの小さくて硬い鯛の歯が活躍します。
ごく細い線も、仕上げにちょっと擦ればフォーカスが合ったように全体が引き締まります。


天然の鯛はちょうど今が旬。
先日もお魚屋さんで立派な鯛を頂きましたが、それでも歯の大きさは、この道具を作れるほどではありませんでした。

この歯の持ち主は元々どんな大きさの鯛だったのか?なぜ他の魚でなく鯛が使われるのか?
この道具を使うときはいつも考えます。


ちなみに正教会のイコンの背景によくある金箔貼りも、仕上げに似たような磨きの作業があるそうです。
以前イコン画の美術展でイコンの背景金箔磨き道具(何か固有名詞はないのかな)を見ましたが、牙のような形状にカービングされためのうでした。
昔はなにかの動物の牙を使っていたのではないかと勝手に想像しています。


2004_54.jpg

では心身健やかに、一週間をお過ごしください。

2020年04月22日

work in progress

2004_32.jpg

輝きかたの違う2種類の貝のコンビネーション。
以前から試してみたかったので、どんな仕上がりになるか楽しみ。

しかしこの作業、ルーペ越しなので眩しくて仕方ありません。
製作中、角度によっては本当に目がくらみそうになり、慌てて向きを変えたりします。

小さくても存在感があるのはこの光の強さゆえですね。


2004_40.jpg

最近の朝の楽しみだったのに、終わってしまった連載。
実物の、細かいところを眺めたくて仕方ない画ばかりでした。

名残惜しさに、本棚からこんなのを引っ張り出してみたり。

2004_41.jpg

今日もよい一日になりますように。

2020年04月14日

引き締めの効果

2004_23.jpg

花に見える葉の部分は、立体感がもう少しほしい。
きゅっと印象を引き締めるためにも葉脈を控えめに描きたいと思います。

控えめな線に仕上げるには、まず細く描きます。

細い線が描ける筆は、バレエ団に例えると「プリンシパル」。
アテナリには20本ほど所属していますが、プリンシパルは1〜2本です。
全ての筆がコール・ド・バレエからスタートして、たいていソリストを経てプリンシパルに選ばれます。
プリンシパルでいられるのは長くても1年くらいなので、人材ならぬ筆材の確保には常に気をつけています。
もちろんどのポジションも製作に必要です。

さて細いきれいな線が描けたら、細かい蒔絵用の金属粉を撒きます。今回は純銀粉。

蒔絵用の純銀粉は粗さが20種類あります。
今回は細かいほうから2番めのものを使うことに。

描く工程はこれでおしまい。
あと3つほどの工程を経て、仕上がりです。

仕上がったものを「商品」にするためのあれこれも同時並行で進めます。

2004_24.jpg

注文していた桐箱、届きました!
外出を減らして仕事を続けるための、インフラを支えて下さっている方々に感謝。

2020年04月12日

グリーンのアクセント

2004_22.jpg

ハナミズキの(ホントの)花の部分をポイントにしたくて、螺鈿に。

螺鈿(らでん)の螺(ら)は貝を指します。
螺子(ねじ)の螺、螺旋階段の螺・・・挙げていくと、貝の形状とリンクしますね。

素材の選択肢はいろいろありますが、今回は印象をきゅっと引き締める華やかなグリーンの貝を使います。

2004_21.jpg

これはニュージーランドのあわび貝。
使える部分はごくわずかなのですが、鮮やかな発色のパーツが取れるのでポイントづかいに重宝します。

トップ写真は小さな丸い粒に切り取って、バランスを見ながら配置しているところ。

この日は製作スタートから6日目。
モティーフにした植物の姿からは意識が離れ、目の前の品の完成イメージに集中します。

2020年04月10日

青い空 白い花

2004_18.jpg

爽やかな初夏の空にまぶしい白を散りばめる、あの木。ハナミズキ。
花のように見える部分は、中央の花を包むように進化した、葉っぱだそう。


しばらく、着物に合わせる装身具の製作が続きますので、こちらで制作過程のことを少しご紹介していこうと思います。

いくつかのアイテムに展開予定のこのモチーフ。
まずは写真のようにラフに描き散らかします。

行き詰まったり飽きてきたら、筆記具を替えてみる・・・とは、20余年前に先生に教わったことです。
教わったことはあらかた忘却しましたが、先生自身の経験に基づく小さなTipsのほうは長く記憶に残っているのが面白い。

さて、いい感触がでたら、アイテムごとの形や大きさにまとめていきます。
一番こだわるポイントは身に着けたときの感じの良さ。

蒔絵技法は表現の幅が広いですし、ジュエリーの素材や技法をミックスするとまさに無限の可能性があります。

どんなテイストに着地させるかあれこれ思い巡らせながら、描きます。

2020年03月16日

菊池ビエンナーレ展

2003_18.jpg

いつも通り人が少なくて快適だった菊池智美術館。
毎回見ている菊池ビエンナーレ展を見に出かけました。

田島正仁さんの紫は、ただならぬ存在感でした。
七色のなかで紫は限(きり)の色。そのことを思い出すような色の美しさに集中できる作品です。
それから、かのうたかおさんのギリギリ感(製作から運搬、展示に至るまですべて)が面白かったです。

展示されていた入賞作品は、火に任せたようなワイルドなものが少なく、細かく手入れされた質感や色あいのニュアンスで勝負する作品が多かったような。
佇まいがソフトで、照明の具合で表情がかなり変わりそうな作品群。
展示準備作業は想像を絶する大変さだと思います。(ちょっと覗いてみたい)

この公募展、応募者はほとんど日本の作家さんですが、海外の作家さんの比率が増えた展示も見てみたいなと思いながら、会場を後にしました。

2020年03月14日

読みかけていた本

2003_17.jpg

ポップアップショップの会期中お預けになっていた本。
面白かった!

新聞の書評に載っていたこの本に興味を持ったとき、ムガール帝国を創ったバーブルが書いた日記形式の本『バーブル・ナーマ』をひろい読みしていました。

バーブルは新しく征服した土地を評価するのに、「良いメロンが採れる」「ブドウがうまい」と果実の質にたびたび言及します。それが気になって仕方がありませんでした。

だって当時(15-16世紀)、統治者が気にするのは穀物の収量のはずだと思っていたから。
日本だったらまず米、次に米、何をおいても米だし。

それが、メロン?ブドウ?・・・大丈夫? 
その違いが面白くて気になって、ある日見かけたこの本にも興味を持ったというわけです。

結局、この『反穀物の人類史』では、穀物(=税)を人間に余剰生産させてその収量管理をする国家という形態と、そうでない大小の統治形態があり、ムガール帝国は後者のスター級だったと書かれています。

そしてちょっと驚いたのは、ここ数年自分が興味を持って調べたり読んだりしていたテーマが軒並み後者に分類されていたこと。アイヌもそう。

そういえば、直木賞受賞で話題になった『熱源』はお勧めです。
日本の北端とユーラシア(中世以降はロシアということになりますが)の東端を兼ねる位置に暮らした人々について、その営みの断片を知ることができます。